生産性で人が評価される世の中、政府は「一億総活躍社会」を提唱する。そんななか、かめちゃんは悠々と泳いでいる。いや、本人は必死だ。しんどいことも多いだろう。
それでも生きている喜びを素直に噛みしめながら、わたしたちにこんな言葉の欠片を届けてくれた。この詩集は、きっと多くの「生きづらさ」を抱えた人の心に響き、癒しと救いを与えてくれるだろう。これは、青く澄んだ心の海の底から、かめちゃんが拾い集めて届けてくれた贈り物。深い深い海の底を突き抜ければ、そこは青い空。最も個人的な心の真実が、無数の人の心につながっていく。
(寮 美千子 跋文より一部抜粋)
山をこえ 海をこえ 星をこえ あなたに向かって
うさぎとかめの競争の話で、ほんとうに負けたのはかめのほうだ。
かめは、速く走ろうと思ったとたん、かめであることのすばらしさを忘れてしまった。そして日なたぼっこをしたり、泳いだり、のんびり歩いたりする、かめらしいのどかな生きかたを捨ててしまったではないか。
その点うさぎは、ここちよく昼寝して、力のかぎり走って、競争には負けても、うさぎであることを失わなかった。
「かめもがんばって、うさぎのように走りたまえ」なんて、そんなうさぎだけの立場から、開発や障害者問題を考えてはいけない。かめはせいいっぱい かめらしく、うさぎも
せいいっぱい うさぎらしくしながら、おたがいに仲よく暮らしていけたらいいのに。(中略)
わたしはここにいるぞ! そうなんだ。のろくても速くても、弱くても強くても、わたしらしくあれば、それがいちばんだ。
こんなわけで、わたしは自分のニックネーム(かめ)が大好きだ。
しかし本物のかめが道路でひき殺されているのを見ると、のどかに生きようとすることは闘いなんだなあと思い知らされる。
それでもかめは絶滅しないで、のそのそ生きつづけるだろう。突き進む時代の流れにそぐわないうたを、そっとうたいつづけながら。
そして、かめであるわたしが動かなくても、この詩集をひらいてくださったかたのところへ、わたしのこころはさっと飛んでゆく。だからやっぱり「空とぶかめ」なんだ。
(三村雅司「あとがき」より一部抜粋)
ISBN978-4-87806-814-0
C0092
A5判170頁、並製本、カラーカバー
定価[本体価格1,200円+税]







