奈良刑務所物語~治安維持法で囚われた人々

治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟奈良県本部編
「スパイ防止法」の本質を知るための必読書
星野リゾートによって2026年にホテルに生まれかわる「旧奈良監獄」。明治5大監獄の1つとして建設されたこの監獄は、建設当初「受刑者の人権を守るための近代建築」として造られたものだった。ところが昭和の「治安維持法時代」には、全国の「思想犯」を収容、思想を統制し、人権を抑圧するための人権抑圧装置となってしまった。戦後は、少年刑務所として、少年たちの更生に寄与する教育を行なってきたことで知られている。
「治安維持法時代」の黒歴史は、終戦間近、「戦争関連の書類をすべて消去せよ」との命令が内務省官僚の奥野誠亮により下り、だれがどのような罪で収容されたのか、長いこと不明となっていた。これを掘り起こしたのが、本書の著者たちだ。当時植民地だった朝鮮に、焼却されなかった書類が残っていることを突き止め、そこから、受刑者の氏名を割り出し、全国の「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」の仲間に呼びかけて、可能な限りの資料を収集。それをまとめた大変な労作である。「スパイ防止法」が云々される今日、振り返るべき貴重な記録だ。

ISBN978-4-87806-815-7 C0031
B5判194頁、並製本、カラーカバー
定価[本体価格1,200円+税]

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