修験道の真実と未来~神と仏と日本のこころ~

「はじめに」より

奈良県宗教者フォーラムは、大和の古社寺と新宗教(立正佼成会・天理教)の各宗教者が自己研鑽の場として発足した勉強会である。 宗教的情操教育や家庭における宗教心の涵養といった問題を取扱っている中で、この大和という土地に今も素晴しい姿で受け継がれている在来の信仰(神)と、外来の信仰(仏)が一線を画して和合した姿について、もっと掘り下げていこうという事になり、回を重ねていった。
その一つの帰着点として、日本で生まれた在来と外来の信仰が当初から一体となった「修験」という信仰こそ、この大和を源として構成発展してきたものであるにも拘らず、ほとんど実態が知られていない事に思いを致し、修験を識るため、入門編・展開編・考究編と三度にわけて勉強することとした。
めでたくも当フォーラムが本年(平成二十五年)十周年を迎えるにあたり、その記念としてこの三度の成果を一冊にまとめ、更なる発展のよすがとするものである。

(編集委員 岡本 彰夫)

 「おわりに」より

奈良県宗教者フォーラムの大きな特徴は、実行委員会を構成する奈良の古社寺と新宗教との、宗教の枠を越えた仲のよさである。他府県の宗教界ではあまり聞かない状態といえよう。
修験道は明治の神仏分離、修験道廃止の施策によって、壊滅的な状況に陥り、以降、徐々に復興は遂げているといえ、宗教史や文化史の上でも、正統な評価を与えられていない。とりわけ伝統宗教の中では、他の古社寺同様に、日本人古来の信仰形態を伝えているにも関わらず、あまり関係性を持たないのが実情といえた。
そんな中、奈良の古社寺と新宗教の代表的宗教者による本会が、修験道とがっぷり四つに組んだ三年にわたるフォーラムを成功に導いたのは、偏に、この宗教者同士の仲のよさであると言って過言ではない。

一神教世界はいざ知らず、日本は仏教伝来の昔から、神と仏は仲むつまじく、互いに影響を持ちながら、日本人の精神文化を育んできた。今回テーマとなった修験道はその土壌のもとに生まれた日本人の民俗宗教である。 もちろん長い歴史の中では、神道と仏教の間で多少の争いはあったにしろ、神仏和合の心が、日本人の宗教心の根幹を作り上げて来たのは間違いない。
そういう意味では、神仏分離が断行された明治以後、様相は一変したとはいえ、今なお、その神仏和合の心のもとに集う当会の意義は大きい。もともと宗教者同士の勉強会で始まった当会であるが、本書の上梓を機に、更に宗教者以外の多くの方々との繋がりを広げつつ、十年の節目を経て、大いなる発展を果たすものと確信をしている。

(編集委員 田中 利典)

もくじ

巻頭言

はじめに

第一章 修験道を考える

第一部 基調講演「修験道入門」

「神仏習合」という信仰のかたち/大自然に想定外などない/
修験のキーワードは山・実践・多神教/外国の神「仏」の受容と神道の誕生/
神と仏から生まれた権現信仰/
悪魔が棲む山、神がおわす山/修験の祖、役行者の開山伝説
天台系は本山派、真言系は当山派/金峯山寺と南都東大寺との深い関係
役行者、江戸時代に諱号を賜る/修験道信仰廃絶の危機と負の遺産
修験の伝統の継承と再復興/修験が結ぶ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」
神と仏に対する祈りの心を取り戻そう

第二部 パネルディスカッション「歴史にみる修験」

 日本古来の聖地、金剛・葛城山/葛城山麓、一直線に並ぶ社寺
天理教立教と修験の意外な関係/全国を網羅する修験の情報網
法華堂の修験、千日回峯行「千日不断花」/宗派や時を超えた修験の存在意義
山伏の祭文に起源する江州音頭/オオカミ男は本当にいるか
山の修行が脳を鍛え意識をリセットする/シンプルな生き方が地球を変える
金峯山寺と南都修験との関わり/修験に守られた地、大和
手間暇をかけて自然を敬う心を養う

第二章 修験の歴史と展開

公開講座
第一部 「平城京を支えた山林修行者―天皇と神と仏の出会い」
第二部 「奈良を中心にした修験の歴史と活動」

第三章 修験道の真実と未来

シンポジウム
「修験道の諸相」
庶民習俗のなかの修験とその本質/習合するが、習合しない神と仏
「法相学徒の不学は神慮にもとる」 /修験は戻せず、分けられず
修験は日本民族が生んだ実践の宗教/江州音頭に息づく山伏の声
消えた伊勢の太々神楽/全国に伝授された春日の神楽
春日若宮おん祭の伝統の灯/各地や集団に土着する実践宗教
平安文学のなかの修験/修験道本山流聖護院の開創
宮様の大峯入峰とその実際/入峰の資金集め大作戦
修験道の立ち位置を探る/一神教・多神教の神々とその世界
開祖は聖なる山に籠る/人は神になれるかなれないか
仏教以前のインド/都市型仏教と山岳型仏教
日本における信仰の受容と発展/修験的思考を求める現代社会
奈良が育む風土と宗教

おわりに

史料
年中行事史料解題
金峯山寺年中行事 史料

B6サイズ、252頁

  • 奈良県宗教者フォーラム編
  • 発行日:2014年8月30日
  • ISBN978-4-87806-509-5
  • 定価:本体1300円+税
  • B6サイズ、252頁
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